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再生支援サービスの実績・事例

事業再生事例

事業再生事例1 不採算事業の受注により資金繰りに行き詰まった会社、無担保の自宅は離婚により配偶者に財産分与、息子は新会社を設立し事業譲渡を受け、事業承継を果たした事例

(本事例の概要)
建設業を営む会社は長年公共工事により事業を継続してきましたが、ここ数年における公共事業の急減や電子入札制度の導入により、売上の減少と赤字工事の受注が続き、リスケを余儀なくされました。社長も70才を超え御子息への事業承継を考えておりましたが、2億円近い債務を有する事業承継に御子息が難色を示し事業の先行きが見えなくなったところで、外科型再生支援を受けることになりました。


(外科型再生支援)
支援先は公共事業に依存し過ぎ赤字工事を受注し続けたため、2億円近い借入金を抱え、明らかに返済不能な状況であり、御子息は有能な技術を、民間工事を主とする新会社で活用したい意向でした。従って、社長には自らの引退に伴い、第二会社方式による外科型再生スキームを実行するよう提案しました。また、無担保の自宅については、配偶者との間で協議離婚が成立したため財産分与することになりました。そして、御子息は母親の自宅を担保に資金調達し、同社の事業の一部を有償で譲り受けることとなりました。これにより、同社と社長は法的整理を余儀なくされることとなりましたが、外科型再生支援により社長の希望した御子息の事業承継が不完全ながらも実行されることとなりました。


(本事例の再生ポイント)
中小企業の後継者問題の1つに後継者の過大な債務引受問題があり、本事例はまさに過大債務の除去が事実上の事業承継につながったと言えます。また、社長の財産(自宅)の移転につき、婚姻20年以上の配偶者の居住財産の贈与の特例を使える事例もありますが、本事例においては同社が代理人弁護士による債務整理通知を発送する直前でしたので、同特例の適用時には破産管財人による否認権行使の対象となるため、社長は離婚を決意され財産分与により自宅を手放すことになりました。

事業再生事例2 仮装経理に基づく消費税1200万円の還付後、同資金を役員退職金に充当、役員が設立した新会社に事業譲渡した事例

(本事例の概要)
小売業を営む会社は金融機関との融資取引継続のため、売上と在庫を巨額(1億円)に水増しする粉飾決算を行うなどして資金を回しておりましたが、リスケにより新規融資が止まると即座に資金繰りに行き詰まり、再生支援を受けることになりました。

(用いた再生支援スキーム)
財務DDを行ったところ、財務格付による債務者区分は「破綻懸念先」という厳しい経営状況でしたが、バブル期に建設した自社ビルの借入金(5億円)を任意売却により大幅に債務整理し、拡張しすぎた小売事業を採算性のある半分の事業に縮小すれば十分再生可能と判断し、第二会社方式による外科型再生を実施することとしました。

第二会社の代表にはNO2の役員が同社取締役を退任し新規設立しましたが、同設立資金は同社の仮装経理による消費税の還付金1200万円の一部をNO2の役員退職金に充当し、同資金で移管する事業の従業員・在庫・仕入債務を引き継ぎ、同社より自社ビルの一部を賃貸し、事業を開始しました。


一方、同社には残余の事業と金融機関への債務等を残し、破産法に精通した弁護士を選任した上、債権者に債務整理通知を発送しました。同時に自社ビルの抵当権者である金融機関には任意売却の意思表示を代理人を通じて行い、提携不動産会社が任意売却の交渉を行うことになりました。


もちろん任意売却が100%成功する保証はなく、買受協力会社の購入可能価格の範囲内で折り合いが付かない場合は、競売に移行し、競売でも取得できない場合は、落札者との賃貸交渉に委ねられることになりますが、最悪の事態として、すべての可能性が消滅するまで短くとも一年は優にかかるため、最悪の事態に備え、第二会社は事業所移転を念頭に起きながらの事業開始となりました。


また、同社の従業員との関係においても、経営リスクとインセンティブを共有する観点で、可能な限り業務委託契約により業務を委託することとし、実際に何人かは自らが法人を設立するに至りました。これにより、同社では固定費だった人件費を、ほぼ変動費化することに成功し、競争原理の働く組織に生まれ変わったため、新会社は安定的な黒字企業に再生され、金融機関とも新たな与信関係により融資取引を受けることになりました。


同社は現在債務整理手続中であり、自社ビルの任意売却交渉の結果を待ち、法的整理に移行し、社長も同時申立により法的整理を実施する予定です。


(本事例の再生ポイント)
本事例は冒頭に記載の通り、バブル期の投資による過大な借入金の排除と拡張しすぎた事業の大幅な縮小を、外科型再生スキームである第二会社方式により合法且つ大胆な組織再編により早期の事業再生を促し、事業と雇用を守り、無用な失業と仕入先の連鎖倒産を防いだ点であります。まさに「身の丈」に合わせた事業再生事例と言えるでしょう。

事業再生事例3 競売で落札された事業用不動産をファンドが買戻し、親族設立の新会社で事業を存続させた事例

(本事例の概要)
会社は旅館業を営んでおりましたが、長年の同族会社経営による弊害で売上は低迷し、資金繰りに窮し金融機関への返済が不能になりました。金融機関との間でリスケジュールの交渉も進まぬうちに信頼関係が悪化したため、金融機関は競売の申立を行い、第三者に取得されることになりました。まさに崖っぷちの状況下で相談があり、再生支援を実施することになりました。


(用いた再生支援スキーム)
本事例においては本業の立直しと事業用資産(旅館)の確保が再生支援の中心となりました。幸い本業においては従来の不特定多数の一般客から、建設業作業員に特化した顧客戦略が功を奏し売上は大幅に回復しておりました。問題は長年の同族経営による経営の腐敗でしたが、ファンドによる経営支援を行うと同時に提携公認会計士事務所の会計監査を導入することにより、社長が肚をくくり事業を親族が営む新会社に譲渡し、同族経営の弊害を排除することに成功しました。


第二会社の代表にはNO2の役員が同社取締役を退任し新規設立しましたが、同設立資金は同社の仮装経理による消費税の還付金1200万円の一部をNO2の役員退職金に充当し、同資金で移管する事業の従業員・在庫・仕入債務を引き継ぎ、同社より自社ビルの一部を賃貸し、事業を開始しました。


そして、もう一つの問題としての事業用資産の確保は、3億円近い競売物件の買戻しであり、交渉は困難を極めましたが、ファンド主導で物件を買戻すことに成功しました。もちろん、同物件は5年後を目途に新会社がファンドより買い戻すこととなり、それまでは定期借家契約により業務を継続することになりました


(本事例の再生ポイント)
本事例は競売による物件喪失後という特殊な事例であり、第三者からの競売物件買戻し交渉とファンドに対する3億円近い投資依頼交渉が最大のポイントとなりました。特にファンド側には新会社への事業移管による経営改善の状況を、提携公認会計士による会計監査に基づき客観的に財務報告できたことがポイントであったと思われます。


また、競売物件の買戻しであったため、買戻しとは言え市場価格よりも低廉な価格で買戻し可能であったことと、事業戦略の見直しによる業績回復の状況を第三者の会計士の監査報告によりファンド側に客観的にアピールできたことが再生のカギとなりました。

経営者再生事例3 民事再生手続が廃止となり自己破産に移行した状況から、ファンドに自宅を任意売却し、買戻予約させた事例

(本事例の概要)
A社長は以前倒産した会社の役員として連帯債務を負っていましたが、債務整理を行わないまま、第二会社方式で新会社を立ち上げ事業を継続しておりました。しかし、同社はA社長の金融事故歴により当然ながら金融機関からの借入ができなかったため、資金繰りに窮し再生支援を受けておりました。そんなある日、信用保証協会から3000万円の連帯保証債務の督促状が届いたため、A社長に(個人民事再生手続)給与所得者再生手続による9割の債務免除と住宅資金特別条項による自宅維持を提案し、同手続を破産法に精通した弁護士に依頼することになりました。


そして程なく、裁判所から民事再生手続の開始決定が下され、債権者からの債権届が提出されたことにより重大な問題が発覚しました。すなわち、A社長の在住する横浜市には市の保証協会と神奈川県の保証協会の2つがあり、当初送られてきた督促状は市の保証協会からのものであり、社長にはもう一件、県の保証協会に対する連帯保証債務も別に存在していることが、その段階で判明したのです。


ただし、両保証協会に対する連帯保証債務の合計額は4000万円程度だと社長から知らされたため、債務総額が5000万円以内であることを要件とする個人版民事再生手続には影響を与えないと考えていたのですが、代理人弁護士に確認すると債権届の合計額は5000万円を超えていたのです。 しかも、その超過額はたったの26万円でした。では、なぜA社長の債務総額は5000万円を超えてしまったのでしょうか?


答えは簡単です。A社長の背負った連帯保証の総額は確かに4000万円でしたが、債権者である保証協会はこの4000万円に遅延損害金を加えて債権届を出してきたのです。


つまり、A社長の連帯債務額は以前倒産した会社が支払不能となり、金融機関に対する期限の利益を喪失した時点から、年利14.6%の遅延損害金が日々加算され続けていたのです。その結果、4000万円と想定していた債務総額は民事再生手続の開始決定段階で、5000万円を僅かに超過するという不幸なことが起きてしまったのです。


この超過した26万円は民事再生手続の申立日ベースで言うと、たったの16日程度申立が遅かったということになります。民事再生手続が頓挫した場合、裁判所は自動的に破産手続に移行するため、代理人弁護士は各保証協会に対し遅延損害金の減額申請により、債務総額の減額(26万円)を模索しました。


この場合、A社長の民事再生手続に各信用保証協会が協力することは、彼らにとっても債権届額5000万円の1割を回収することができ、破産手続に移行してしまえば回収額はほぼ0円なのですから、経済合理的(国民の血税を1円でも多く回収する)に考えれば、代理人弁護士の減額申請に応じると思われました。しかし、両保証協会は事務的に代理人弁護士の申入れを却下したため、債権届出額は5026万円で確定し、裁判所はA社長の民事再生手続を廃止し、自己破産手続に移行することになりました。


これにより、個人版民事再生手続で9割の債務免除と住宅資金特別条項で自宅を維持できるとした再生スキームは白紙となり、自己破産を前提としたA社長の再生支援策の策定と早期の実行が求められることになりました。


(用いた再生支援スキーム)
A社長の事業と自宅を守るため、A社長には会社の取締役を退任してもらい親族に会社の経営を委ねることとし、裁判所には自己破産手続を停止ししてもらい、自宅の抵当権者との間で提携のファンドを買受人とする任意売却の申請を行うこととしました。ちなみに、任意売却でファンドを紹介できるケースは原則として以下の条件が整っているケースです。


そして、もう一つの問題としての事業用資産の確保は、3億円近い競売物件の買戻しであり、交渉は困難を極めましたが、ファンド主導で物件を買戻すことに成功しました。もちろん、同物件は5年後を目途に新会社がファンドより買い戻すこととなり、それまでは定期借家契約により業務を継続することになりました


・不動産物件が市場価格の9割以下で取得できること。

・不動産物件の抵当権が第一順位だけであること。

・債務者親族が不動産を5年以内に市場価格で買い戻せること。

・債務者親族が不動産を賃借できること。

・債務者が債務を法的に整理することを前提に事業を第二会社で存続させ、従業員の雇用と取引先との関係を守ること。

本事案において上記条件はすべて整っておりました。問題は抵当権者が任意売却に応じてくれるか否かという問題でした。



(物件状況)

・取得価額    4500万円(取得平成13年)

・住宅ローン残債 3200万円

・想定市場価格  2200万円

・購入可能価格  1980万円(2200万円×90%)


任意売却の過程は、債務者側が不動産会社を指定し抵当権者との間に入り、販売活動を行い買受人の購入可能価格まで売買金額を下げ、同価格で抵当権者の抵当権を抹消してもらう過程です。もちろん、抵当権を抹消しても残余債務は債務者の債務として残りますが、実際には回収不能債権としてサービサーに売却するか、債務者が自己破産し免責となるのが通例です。

また、競売物件の買戻しであったため、買戻しとは言え市場価格よりも低廉な価格で買戻し可能であったことと、事業戦略の見直しによる業績回復の状況を第三者の会計士の監査報告によりファンド側に客観的にアピールできたことが再生のカギとなりました。


当初、抵当権者の担当者は前向きに任意売却を実施する旨の意向を表明しておりましたが、平成25年に入りアベノミクス効果で資産価格が上昇しだし、競売市場が活況になるにつれ態度が一変しました。結果的に本事例においては競売手続にかけられ、債務者側が競売の取り下げを求めるという緊迫した交渉となりました。


競売手続は開札日の前日まで取り下げが可能な制度ですが、本事例においては最低売却基準価格が1400万円に対し、ファンドは保険として想定市場価格である2200万円の入札を行った上で、開札前日に購入可能価格である1980万円で任意売却にこぎつけることとなりました。


そしてファンドは物件取得と同時に社長親族との間で買戻契約を2400万円で締結すると同時に、同物件を親族に15万円で定期賃貸することとなりました。また、A社長は任意売却の成立により所有資産がなくなったため思い切って自己破産手続を実施することになりました。


(再生支援のポイント)
ここで重要なポイントは、従前の個人版民事再生手続を行っていた場合、A社長は債務額5000万円の1割にあたる500万円を3年で弁済しつつ、住宅資金特別条項により猶予された住宅ローン3200万円の返済を続けなければならなかったところ、自己破産に移行したことにより、債務全額の債務免除を受けることとなり民事再生手続における500万円の弁済が不要となりました。


また、住宅ローンも民事再生手続においては3200万円の残債が残るところ、策定した買戻特約付任意売却スキームにより、親族が3年後の買戻予定価格2400万円を住宅ローンとして資金調達するため、民事再生手続に比較して800万円(3200万円―2400万円)の債務免除を享受したことになり、合わせて1300万円(500万円+800万円)の経済的利益をA社長は民事再生手続が廃止されたことにより享受することとなったのです。


すべてのケースで、本事例のような経済的利益の享受という問題が生じるとは言えませんが、取得後10年程度の物件においては大抵のケースは残債と市場価格との間で含み損が生じ、4000万円程度の物件であればファンドや協力者が2000万円程度で物件を買受けることが可能ですので、再生支援者の気転次第で債務者の自宅を守ることは十分に可能であると思います。


再生支援者として、債務者の自宅を守ることは債務者の家族を守り、ひいては債務者の再生の土台を守ることになるため、必須の再生テーマと考える次第です。